哲学とアートのための12の対話 2025

土曜の放課後 2
After School on Saturday

  哲学者たちとの対話

第5回 スピノザと人新世

日時:2025年7月19日(土曜日) 午後2時〜4時
会場:京都市立芸術大学 C棟3階「講義室7」 参加者:28名

 学校の授業では、スピノザの哲学とは「汎神論」だと習います。しかし汎神論とは何なのか? 字面からすると、世界の至る所に神様がいると言っているみたいですが、それはスピノザとは無関係です。スピノザ哲学の核心は、神と自然とは同じものだということです。これは神についての伝統的な考えからすると異端、無神論、唯物論ともみなされます(だから命を狙われました)。一神教的な神は精神的なものの極致です。それが自然と同じということは、神から精神的なものを分け与えられている人間も、自然と同じということになります。つまりスピノザ哲学を徹底すると、人間と自然との間に対立はなく、人間はその精神も含めて自然の一部ということになります。
 「人新世」というのは、人類の文明活動が地球環境に影響を及ぼし始めた時代に、新たな地質年代として与えられた名前です。それはいつから始まるのかと言うと、1万2千年前の農耕革命以降、産業革命以降と色々解釈がありますが、いずれにしても二酸化炭素による地球温暖化などの環境問題に関してよく引用されます。人新世という考え方の背後には、人間と自然とを対立したものとみる、素朴な哲学的信念があります。そうした単純な対立は私たちの常識の中にも潜在していますが、それこそスピノザが乗り越えようとした思考の足枷です。スピノザは西洋の哲学者ですが、精神と自然とを同一視する思想は西洋的ではなく、そもそも西洋/東洋という枠組みには収まりません。
 第5回はそうしたスピノザ哲学に照らしつつ、現代文明と地球環境との関係についてあらためて考えてみたいと思います。(吉岡 洋)



講座資料
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